秋の深まりゆく山里、カメラは一軒の古びた民家に向けられていた。「今日は特別な方にお会いします」とレポーターの声が響く。
ドアが開き、白髪交じりの老人が現れる。「茸田きの夫(たけだ きのお)です。よろしく」と柔和な笑顔を向ける。
きの夫は70歳。キノコ狩りの達人として知られ、その腕前は伝説級だ。「キノコ一筋50年」と語る彼の人生に、全国ネットの生放送番組が密着する。
「最初はね、食べるためだったんです」と、きの夫。貧しかった若い頃、山のキノコが貴重な食料だった。「でも、採るうちに魅了されてね」と目を細める。
カメラは山道を進むきの夫を追う。「ここら辺にありそうだ」と呟きながら、鋭い目つきで辺りを探る。突如、「あった!」と叫び、茂みに手を伸ばす。
「見てください、立派なマツタケです」とレポーターが興奮気味に語る。スタジオからも歓声が上がる。
きの夫の腕前は圧巻だった。次々とレアなキノコを見つけ出す。「キノコには語りかけるんです」と微笑む。「すると、キノコが『ここだよ』って教えてくれる」
番組後半は、きの夫の半生を振り返る。若くして妻と出会い、二人三脚でキノコ狩りに励んだ日々。やがて名人として認められ、全国から弟子入りの申し込みが殺到した時期。
しかし5年前、最愛の妻を病で亡くした。「彼女がいなくなって、キノコ狩りの楽しさも半減しました」と寂しげに語る。
「でも、山に入ると妻の声が聞こえるんです。『そこよ、きの夫』って」老人の目に涙が光る。
番組も佳境に入り、レポーターが切り出す。「達人の宝物は何ですか?」
達人は静かに立ち上がる。
「見せましょうか?」
と言いながら、おもむろにベルトに手をかける。
スタジオが固唾を呑む中、きの夫はゆっくりとズボンを下ろし始めた。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
焦るレポーター。
カメラマンは顔を背け、音声スタッフは目を閉じた。スタジオではディレクターが「カット!カット!」と叫んでいるのが聞こえる。
しかし、きの夫は意に介さず、ニヤリと笑いながらズボンを膝まで下ろした。
そこに現れたのは…真っ赤なハート柄のパンツだった。
一瞬の静寂の後、現場とスタジオが爆笑の渦に包まれる。
きの夫は得意げに語る。「これは妻が最後にくれたプレゼントなんです。『あなたの情熱は、このハートみたいに燃えているわ』って」
レポーターは安堵のため息をつきながら、「茸田さん、驚かせないでくださいよ」と冗談めかして言う。
きの夫は茶目っ気たっぷりに応じる。
「いやいや、キノコ狩りは最後まで目が離せませんよ。どんな掘り出し物が出てくるか分からないからね」
スタジオでは、MCが冷や汗を拭きながら言う。
「放送事故が起きるかと思いましたよ」
番組終了後、きの夫の赤いハートパンツは一躍人気者に。「キノコ狩りハートパンツ」という商品名で、アウトドアブランドから発売されることが決まった。
さらに、きの夫は「70歳のセクシーキノコおじさん」として、女性誌の表紙を飾ることに。撮影では、キノコを戦略的に配置して、セクシーでユーモラスな写真が撮られた。
村では「きの夫センセイのどきどきキノコ教室」が大人気となり、連日満員御礼。きの夫は講義の最後に必ず「さあ、みんなでハートパンツ体操!」と締めくくり、参加者を楽しませた。
そんなある日、きの夫は山でひっそりと妻に語りかけた。「かあさん、おれ、こんな風におちゃらけてて良いのかな」
すると、そよ風が吹き、近くの茂みが揺れた。覗いてみると、ハート型のめずらしいキノコが。
きの夫は大笑いした。「そうか、かあさんも楽しんでるんだな。よし、明日もはりきっていくとするか!」
こうして、70歳にして第二の青春を謳歌するきの夫の新たな冒険が始まったのであった。