令和の陰陽師 安倍偽晴明

おもしろ系

東京の下町にある小さな占い屋「偽晴明堂」。
ここで必死に生計を立てようとしていた安倍偽晴明(あべのぎせいめい)(48歳)は、先代の名声とは裏腹に、不運続きの陰陽師として知られていた。彼の占い屋は、丁寧に磨き上げられた看板とは対照的に、いつも閑古鳥が鳴いていた。

偽晴明は決して怠け者ではなかった。むしろ、彼は朝早くから夜遅くまで懸命に働いていた。毎朝、日の出とともに起き、丁寧に神棚を拝み、お札を書き、占いの準備をする。しかし、どれだけ努力しても、彼の占いは当たらず、祈祷は効果がなく、お守りは効き目がなかった。

ある日、若い女性が「恋愛運を占ってほしい」と訪れた。偽晴明は真剣に占いを行い、

「あなたの運命の人は近くにいます。赤い服を着た人に注目してください」

とアドバイスした。しかし後日、

その女性は青い服の男性と出会い、恋に落ちたという。

偽晴明の評判は、また一つ落ちてしまった。

彼は占いの精度を上げようと、夜遅くまで古書を読みあさり、新しい占術を学んだ。ある晩、疲労困憊で寝落ちしてしまい、朝まで寝てしまった。予約のお客さんが来たとき、慌てて起きた偽晴明は寝ぼけまなこでお札を書き、

「大吉」と書くつもりが「大便」

と書いてしまった。お客さんは呆れて帰って行った。

さらに、お札を書くときには日常茶飯時に漢字を間違えていた。「霊」を「霊柩」と書いてしまい、

「これじゃあ、お葬式になっちゃうよ!」

と自分でツッコミを入れる始末。

さらに、彼は祈祷の効果を高めようと山に登って修行した。しかし、祈祷中に突然の雷雨に見舞われ、風邪をひいてしまった。

「これじゃあ、お祓いどころか、自分が祓われそうだよ」

と自嘲気味に笑った。

周囲からは

「安倍偽晴明は本当に陰陽師なのか?」

と疑問視されることもあった。

そんなある日、東京中を恐怖に陥れる奇妙な現象が起こり始めた。街中の電子機器が突如として暴走し、人々はスマートフォンやパソコンが勝手に動き出す様子を目撃した。SNSには怪奇現象の投稿が溢れかえり、「これは呪われている!」という噂まで立った。

政府は秘密裏に、各地の霊能力者や超能力者を集めて対策チームを結成。しかし、彼らの努力も空しく、現象は日に日にエスカレートしていった。最後の手段として、偽晴明に依頼が舞い込む。「もはやあなたに頼るしかない」という切羽詰まった内容だった。

「わかりました。全力で取り組みます」と偽晴明は真剣に答えた。
彼は準備に余念がなく、古い呪文書を調べ、特別な護符を用意した。現場に向かう途中、彼は必死に呪文を唱えながら歩いていたが、それが原因で道を間違え、予定より遅れて渋谷のスクランブル交差点に到着した。

そこでは巨大なホログラムのような怪物が暴れ回っていた。偽晴明は用意した護符を取り出そうとしたが、汗で滑り、誤って古びたガラケーを落としてしまった。慌てて拾おうとした瞬間、その携帯電話が怪物の口に入ってしまった。

驚いたことに、携帯電話が怪物の口に入った瞬間、怪物は激しく震え始めた。そしてみるみるうちに体が縮小し、小さなデジタルペットのような姿になってしまった。

「え?何が起きたんだ?」

と偽晴明は呟いた。周囲の人々も呆然としていた。実は偽晴明には、古い電子機器を理解し、操る特殊な才能があったのだ。彼の「不運」は、最新技術についていけないことから来ていたのだが、それが逆に古い技術を扱う才能となっていた。

この出来事をきっかけに、偽晴明は自分の隠れた才能に気づき、古い技術と新しい問題を結びつける「レトロテック陰陽師」として活躍するようになった。彼の真面目さと努力が、思わぬ形で花開いたのだ。

「最新技術も大事だけど、古い物も忘れちゃいけないよ」と偽晴明はよく言うようになった。

「人間もAIも結局同じさ。一生懸命努力して、自分の特徴を活かせば、きっと道は開けるもんだよ」

こうして安倍偽晴明は、その独特な「術」で東京の平和を守り続けた。彼の評判は先代をも凌ぐほどになり、「デジタル陰陽師」として親しまれるようになった。そして、自分自身も以前より自信を持って仕事に取り組むようになった。

教訓

この物語から得られる教訓は、「努力が報われないように見えても一生懸命にやっていれば、思わぬ形で活きる時が来る」ということです。

一見、時代遅れや無用に思えるスキルでも、それを活かす場面が必ずあります。自分の特徴を理解し、それを活かせる場所を見つけることで、人生は思わぬ方向に開花することがあるのです。諦めずに努力を続け、自分の独自の才能を見出すことが、成功への鍵となるでしょう。

自分自身を理解し、それを活かすことで人生は思わぬ方向に開花することがあります

おしまい