サルカニ合戦 ~令和版~

おもしろ系

2024年、ある地方都市の郊外にあるコワーキングスペース「フルーツガーデン」。そこで働くカニ子さんは、SNSマーケティングの専門家として人気を集めていました。

ある日、カニ子さんが自慢の手作り弁当を食べようとしていると、同じスペースを利用する売れっ子インフルエンサーのサル太郎が声をかけてきました。

「やあ、カニ子さん。その弁当、おいしそうだね。ねえ、僕の持っているこの最新のスマートフォンと交換しない?」

カニ子さんは驚きました。「えっ、でも私の弁当とスマートフォンじゃ価値が違いすぎます」
サル太郎は笑いながら言いました。「いやいや、このスマホには最新のAIアプリが入っているんだ。君のSNSマーケティングの仕事がもっと効率的になるよ。弁当は食べたらなくなるけど、このスマホがあれば長期的に稼げるようになる。どう?」

カニ子さんは少し迷いましたが、仕事の効率化に惹かれて交換に応じました。

しかし、そのスマートフォンには実はバグがあり、カニ子さんの顧客データを勝手にサル太郎に送信してしまっていたのです。
サル太郎は、そのデータを使って自分のフォロワーを増やし、さらに人気インフルエンサーになっていきました。

カニ子さんが不審に思ってサル太郎に問い詰めると、彼は開き直りました。

「ビジネスは勝ち負けだよ。君が騙されたんだから仕方ないじゃない」

そして、サル太郎はカニ子さんの評判を落とすような投稿を始め、彼女の仕事は激減してしまいました。

落ち込むカニ子さんを見かねて、「フルーツガーデン」の常連たちが集まりました。ITセキュリティの専門家クリ男さん、弁護士のウス江さん、ハッカーのハチ夫さん、そして清掃員のウシ太さんです。
「このままじゃいけない。サル太郎の不正を暴こう」とクリ男さんが言いました。

みんなで作戦を立て、サル太郎のSNSアカウントにサイバー攻撃を仕掛けることにしました。クリ男さんがファイアウォールを突破し、ハチ夫さんが偽の投稿を大量に作成。ウシ太さんは、サル太郎の人気コンテンツを埋もれさせるような「炎上」投稿を仕掛けました。

そして最後に、ウス江さんが証拠を集めて、サル太郎の不正行為を告発する投稿を一斉に拡散したのです。

サル太郎のフォロワー数は急激に減少し、スポンサー企業も次々と契約を解除。彼の評判は地に落ちました。
カニ子さんは、この騒動をきっかけに「エシカルインフルエンサー」として再起。正直で誠実なSNS活用法を提唱し、新たな支持を集めていきました。

サル太郎は反省し、カニ子さんに謝罪。二人は和解し、お互いの強みを活かしたコラボレーション企画を始めることになりました。

この出来事は、デジタル時代の倫理やプライバシーの重要性を訴える事例として、多くのメディアで取り上げられました。「フルーツガーデン」は、デジタルリテラシー教育の場としても注目を集め、新たな取り組みを始めていきました。

カニ子さんとサル太郎は、この経験を活かして「デジタルエシックス」というポッドキャストを共同で始め、テクノロジーと人間性の調和について語り合いました。
クリ男さん、ウス江さん、ハチ夫さん、ウシ太さんも、それぞれの専門性を活かしてゲスト出演し、多角的な視点からデジタル社会の課題について議論を重ねていきました。

このポッドキャストは、若者たちの間で人気を集め、学校の教材としても採用されるようになりました。

そして、カニ子さんたちの活動は、やがて「デジタル共生社会推進法」という新しい法律の制定にもつながっていったのです。

この現代版「さるかに合戦」は、デジタル時代における倫理、協力、そして和解の大切さを教えてくれます。テクノロジーは両刃の剣であり、使い方次第で人々を傷つけることも、社会を良くすることもできるのだと、私たちに気づかせてくれるのです。

そして、どんなに技術が進歩しても、人と人とのつながりや思いやりが大切だということを、カニ子さんたちの物語は教えてくれるのでした。
めでたし、めでたし。

※ポッドキャスト
ポッドキャストとは、インターネットを通じて配信される音声コンテンツのことです。元々はAppleのiPodと「broadcast(放送)」を組み合わせた造語で、音声や動画のデータファイルを公開する方法の一つとして広がりました。